ダルニー奨学金の担当教師へのインタビュー:カラシン県のスナン先生
ダルニー奨学金の担当教師へのインタビュー:カラシン県のスナン先生
貧困、家族の離散、限られた教育機会――タイの農村地域では、多くの子どもたちがこうした困難に直面しながら学校に通っています。
このたび、タイ東北地方のカラシン県にある小中学校にて、EDF奨学金プロジェクトに長年携わってこられたスナン先生にお話を伺いました。
貧困や家庭の事情から困難を抱える生徒たちの現状、奨学金が彼らの学業と生活に果たす重要な役割、そしてプロジェクトを通して先生自身が感じられた喜びや感動について語ってくださいました。
また、タイの教育が直面する最大の課題である「貧困」や「環境問題」、EDF奨学金プロジェクトへの期待、そして教育格差の是正に向けた提言など、貴重なご意見をいただきました。ぜひお読みいただきたいインタビューです。
自己紹介をお願いします。
こんにちは、私の名前はスナン・アリサポー、ニックネームはパオです。現在、カラシン県にあるラオヤイワナソンパドゥンウェート校の小学校4年生から6年生の英語と、小学校4年生から中学3年生までのコンピューターサイエンスを教えています。教える仕事の他に、学校の総務部長も担当しており、奨学金、生徒支援システム、校舎の管理、その他関連業務を担っています。
 
 
 
EDF奨学生の一般的な状況
2025年度には、ラオヤイワナソンパドゥンウェート校の生徒29人がEDFの奨学金を受給しました。これらの生徒の一般的な状況は、貧しい家庭の出身で、両親が離婚しており、祖父母や叔父叔母などの親戚と暮らしているケースが多いです。経済的な問題があるため、学校に来るのが困難です。EDFからの奨学金支援は、彼らが日々の生活を送る上で大きな助けとなっています。

なぜ奨学金が生徒にとって重要なのか? もし奨学金がなかったら?
EDFの奨学金は、生徒たちにとって非常に重要です。私たちの学校は、生徒が貧しく、多くの面で準備が整っていない地域にあります。この奨学金は、生徒が学校で日々のお金を使うための基本的な原動力となります。少なくとも、それはお昼代や学校で使うものを買うための資金になります。もしこのようなご支援がなければ、生徒たちは多くの機会を失い、経済的な理由で教育システムから脱落する可能性があります。
 
奨学金事業担当者での経験や感動したこと
私は2018年からEDF奨学金の仕事をしており、何世代にもわたる生徒の成功を見てきました。私が受けた感動の一つは、生徒に機会をつなぐ役割を担う一部になれたことです。私は奨学金担当者として、生徒を審査し、生徒一人ひとりがどんな状況に置かれているのかを確認し、本当に奨学金を必要とするのをEDFに検討してもらいます。過去7年間で、私は生徒が受けた小さな機会が、彼らに大きな喜びを与え、将来的に良い人間を育てる力になることを学びました。特に、身体に障がいのある生徒たちは、学校を卒業後、望む分野に進学したことが私にとって大変感動的な経験です。
 

 
奨学金プロジェクトのご担当を通じて何か感じられることはありますか?
学校の奨学金事業を担当することで、私自身の視野が大きく広がりました。私は生徒の可能性を目の当たりにし、奨学金というものが単に生徒達に必要なお金を使えるようにするためのものだけではなく、生徒の命をつなぐ支えとなり、勉学を続けたいという気持ちや学校に残りたいという意欲、そして友達と共に過ごす力になるのだと学びました。特に貧しい生徒たちは、奨学金をもらうととても喜び、心優しい大人から機会を与えられたことを実感できているのを感じます。この経験がきっかけとなり、私はさらに多くの奨学金を探し出し、生徒たちが希望する高校や職業コースに進学できるよう尽力しようと思うようになりました。これまでにも、すでに多くの生徒を支援することができたと感じています。
 
タイの教育の充実・発展への最大の障害や問題は何ですか? 
私にとって、国の教育発展に最も影響を与える問題は、「貧困」です。特に農村部では、ほとんどの生徒が貧困という問題で準備が整っていない家庭に住んでおり、両親は家族を養うために他県へ働きに行かなければなりません。この状況は、一部の貧困地域のみの問題ではなく全国的な大きな問題へと広がっています。多くの生徒が貧困のために機会を失い、教育システムから脱落せざるを得ません。こういった貧困問題こそが、私たちの国の教育をあるべき姿に発展させる為の大きな障害となっています。この貧困問題を解決出来て初めて、生徒に安定した教育の機会を創出することが出来、持続可能な解決策につながると信じています。
 

奨学金を受けても解決が難しい問題は他にありますか?
奨学金を受けてもまだ解決されていない問題は、「環境」です。お金の援助は生徒の日々の生活を助けることはできますが、彼らの「住む環境」を変えることは難しいです。なぜなら、農村部を中心に多くの生徒達は、決して安全な環境に住んでいるとは言えないからです。教師はできる限りのことしかできません。そのため、問題解決が持続可能になりません。もし彼らの住む環境を改善する手助けができれば、教育は向上し、生徒が受けた機会は持続可能なものに繋がると信じています。
 
EDF奨学金プロジェクトについての見解
EDF奨学金プロジェクトは、長年にわたって継続されている非常に良いプロジェクトだと思います。良い点は、非営利団体であり、何の制約もなく生徒を心から助けていることです。EDFの奨学金は、生徒の夢や未来を築き、彼らが望む道を歩み続けるための資金となります。改善点としては、EDFがこれまでまだパートナーになっていない学校をもっと受け入れることと毎年奨学金がなかったクラスにも奨学金を提供することで、より多くの生徒に機会を与えてほしいと思います。
 
 
政府や教育関連組織に伝えたいことは?
政府や関連機関には、教育の本当の問題、すなわち「教育格差」に目を向けてほしいです。特に、タイのあらゆる地域にまだ存在する貧困問題です。多くのタイの子ども達が、不平等な教育機会によって道を閉ざされています。もし政治や社会制度の改善・整備により、奨学金のより積極的な支給や教育を受ける平等な機会提供といった「希望」を子供たちに与えることが出来れば、私たちの国の教育は発展し、将来的に国の中核を担う質の高い人材を育成できると信じています。
 
EDFの寄付者へのメッセージ
EDFの寄付者の皆様に心から感謝申し上げます。皆様は、すべてのタイの生徒に機会を創出する一員となってくださいました。提供してくださった金額は多くないかもしれませんが、生徒にとっては、極めて大きな機会を築き、夢を続け、より良い日常生活を送る手助けとなります。そして、その資金が将来的に彼らを**有能で善良な人間**に育てる一助となると信じています。ありがとうございました。
 
スナン先生のお話から、奨学金の支援が単なる金銭的な援助ではなく、生徒たちの「生きる力」や「学び続ける意欲」を支える大きな希望であることが伝わってきました。経済的な理由で教育の道を断たれてしまう子どもたちがまだ多い中で、先生のように現場で一人ひとりの生徒と向き合い、機会をつなぎ続ける教育者の存在は何よりも貴重です。
そして、寄付者の皆様の温かいご支援が、その努力を支え、タイの未来を形づくる原動力となっています。
EDFはこれからも、教育の格差をなくし、すべての子どもたちが夢に向かって歩める社会の実現を目指して活動を続けてまいります。生徒たちの未来を信じ、応援してくださる皆様に、心より感謝申し上げます。
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