(1)2024年度奨学生が最も多い県と人数:ランキング10位
2024年度では奨学金事業の支援対象となる45の県の中から、画像は、奨学生が最も多い10の県を示しています。
1) 第1位はウボンラーチャターニー県で、679人の奨学生がいます。この中には、初めて奨学金を受けた中学1年生が296人含まれています。
2) 第2位はナコーンパノム県で、奨学生は合計605人で、その中に新たに奨学金を受けた中学1年生が90人います。
3) 第3位はナコーンラーチャシーマー県で、奨学生は合計526人で、その中に新たに奨学金を受けた中学1年生が117人います。
(2)両親の現状
問題点 Ⅰ:両親の現状と家族構成
結婚(同居)と答えた人は4,919人と非常に多く、このグループにおいては、結婚が依然として一般的なライフイベントであることがわかります。一方、離婚率は結婚数の約43%を占めており、奨学生の一部の家庭状況を反映していると考えられます。この問題の本質は、子どもたちが両親の愛や温かさを十分に感じられず、問題があったときに、高齢化した祖父母しかそばにいないので相談できる相手がいないという状況にあります。このような環境が原因となり、若者たちは、自分の中で欠けているものを埋め合わせるために、正しいかどうかわからないまま、さまざまな行動に出てしまいます。その結果、未婚の妊娠、暴力、薬物依存など、深刻な社会問題が数多く発生しており、ドロップアウトにもつながっています。離婚は両親の問題ですが、子どもたちには大きな影響を与えます。子どもたちは、生活が一変することに戸惑い、怒りや悲しみや様々な感情に苛まれます。順応が早い子もいれば、そうでない子もいます。専門家によると、両親が子どもに正直に、分かりやすく離婚の理由を話し、相手を悪く言わず、変わらず子どもを愛していると伝えることが大切だと言われています。
(3)同居する保護者
問題Ⅱ:子供が働かざるを得ない環境
奨学生の保護者として最も多いのは「両親」で4,068人です。これは家庭が一応安定していることを示唆しています。しかし、貧困家庭の多くは、家計や子どもの教育費を賄うために父親だけでなく母親も働かなければなりません。日雇いの仕事に就く父親だけの収入では家計を十分に支えることができないからです。この状況下で、貧困層の家庭において、両親と住んでいるにも拘らず、子どもたちが教育を受けることが難しい主な要因は、親が子どもの教育の大切さを理解していないというよりも、経済的な問題、つまり、家庭の収入が十分でないために、親が子どもに働かせ、家計を支えさせなければならないという現実にあります。
さらに注目すべき数字は、保護者として子どもたちが一緒に住む親戚・家族のメンバーと回答した2,347人といった数字です。子どもたちには父親や母親がいるものの、彼らは別の地域やバンコクのような大都市に出稼ぎに行き、子どもたちは収入のない祖父母と生活することになります。祖父母は、年齢層により毎月700~1,000バーツの政府からの年金手当に依存していますが、健康上の問題を抱える高齢者が多く、子どもたちはますます負担を強いられることになります。たとえ親からの仕送りがあったとしても、日常生活を安定して送るには十分だとはいえません。このような状況は、学生が放課後や休日に家計を支えるために働かざるを得ない状況を生み出し、将来の学業にも悪影響を及ぼす可能性があります。
(4)両親の職業の現状(ランキング10位)
問題点Ⅲ:専門性・学歴向上の重要性
父親も母親も最も多い職業は「日雇い」で非常に高い割合を占めており、奨学生の全体的な両親の職業が経済的な安定性や家庭の状況に大きく影響していることを示しています。「日雇い」という仕事は、住んでいる地域の近くで何でも雇われれば働くというような非公式な雇用で、収入もバラバラになっており、経済的な不安定さを抱えている家庭が多いことが推測されます。奨学金を受ける学生の家庭でよく見られる日雇いの職業には、農作物の収穫作業、建設の雑工、家畜の飼育などがあります。更に、最低賃金が400バーツに引き上げられたにもかかわらず、農村部では300バーツ未満の賃金で働いている人がまだ多く存在しているのが事実です。現在の高騰する生活費と比較すると、物価は都市部と農村部でほとんど差がなく1日300バーツ未満の収入では、生活が非常に厳しくなります。
そして、もう一つの問題点は、日雇いの仕事よりも安定した収入を得られる専門的なスキルを必要とする職業の数が非常に少ないことです。例えば、父親の職業である自動車整備士や大工、母親の職業である裁縫師や理容師などが挙げられます。これは、両親の学歴と関係していることが考えられます。もし、子どもたちが学歴を向上させられなければ、家族の貧困が代々続く可能性があるということです。
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