タイ社会における、格差と不平等について
タイ社会における、格差と不平等について
タイ ~広がる格差と貧困の連鎖~
タイ社会における、格差と不平等について
 
    過去においては、タイ社会における格差は、経済活動や国民の所得のみに起因していたかもしれません。しかしながら、現在は経済面だけではなく、その格差は、国の社会福祉への人々のアクセスの格差に起因する問題にもなっています。生活のために必要な、社会福祉、教育、基本的な公共事業など、これらの受ける機会を失っている人々が多くいます。このような格差や不平等が、タイの子どもたちの教育格差にも影響を与えています。
    タイ憲法では、すべての子どもに義務教育を終える権利があるとされていますが、実際には、都市部でも農村部でも、貧しい家庭の子どもは勉強することに限界があります。また、各県立学校に割り当てられる予算は平等ではありません。規模の大きい学校は、地方の小規模な学校よりも政府から多くの支援を受けていますが、それでも学校の活動や一人当たりの給食費の予算は限られています。そのため、学校は生き残りをかけて、民間企業から学生への経済的な支援策を模索しなければなりませんが、学生が支援を受けられる保証はありません。ほとんどの学校は、特別コースの費用を捻出するために、子どもたちの親からの援助やサポートを求めなければなりません。これが貧しい家庭にとっては、大きな負担になり、学校にお金を出すよりは、自分の子どもを働かせて家計の足しにしたほうが、と考えてしまうケースが多発しているのが現状です。


 政府による 「15年間教育費無償化政策 」の現状
タイ政府は2009年から、全国の幼稚園から専門学校を含む高校までの学校で発生する費用を支援することを目的としたメガプロジェクト「15年間教育無償化政策」という制度を用いて、教育支援を表明しています。国立学校には100%支援される制度です。この政策に基づいて政府が支援する予算は次の5項目です。=① 授業料、②  教科書、③学校制服、④学用品と文房具、⑤  生徒の育成活動費。
下の表は、教育省基礎教育政策企画室が決定した政府負担の項目とそのクラスごとの金額を示しています。学校は、生徒数に応じて予算を与えられ、この予算で、水道・電気代、建物の維持費、政府援助以外の費用など、教育・学習に関わるすべてのことを管理します。

単位 バーツ(B)/ 円  1バーツ約4円(2023年2月)
項目 幼稚園 1-3年 小学校 1-6年 中学校 1-3年 高等学校 1-3年
授業料 B1,700/5,200円 B1,900/7,600円 B3,500/14,000円 B3,800/15,200円
教科書 B200/800円 B347-580
1,388-2,320円
B560-739
2,240-2,956円
B763-1,160
3,052-4,640円
学用品、文房具 B200/800円 B390/1,560円 B420/1,680円 B460/1,840円
学校制服 B300/1,200円 B360/1,440円 B450/1,800円 B500/2,000円
生徒の育成活動費 B430/1,720円 B480/1,920円 B880/3,520円 B950/3,800円
合計 B2,830
11,320
B3,477-3,710
13,908-14,840
B5,810-5,989
23,240-23,956
B6,473-6,870
25,892-27,480
 
しかし、この「教育無償化政策」は、本当にすべてが無償になるわけではなく、政府からの予算で賄えない部分は、学生が自己負担しなければならない部分がまだ多く残っています。つまり、「無償化」ではなく、「部分的に」無償化されているのです。
 
The Equitable Education Fund (EEF)の2022年度調査データによると、保護者が負担する授業料、制服、政府から支援されない設備費などは、1人あたり年間平均4,055〜9,042バーツ(約16,220円~36,168円)と言われています。さらに、通学交通費や食費などの追加費用は、一人当たり年間平均2,058〜6,034バーツ(約8,232円~24,136円)です。合計すると、生徒1人あたり年間平均6,113〜15,076バーツ(約24,452円~60,304円)を費やさなければならないことになります。
 

EDF-Thai(タイ事業所)の支援地域の学校のほとんどは小規模な学校であるため、特に学校側が生徒の保護者に支援を求めなければならない状況です。これらの地域では、毎月の生活費を捻出するのが難しいため、残念ながら、図書館の本の補充や教材・備品を購入するための予算が削られることもあります。
貧しい家庭の生徒が学費を用意できず、学校に行きたがらなかったり、家庭の事情で働かざるを得なかったりする大きな原因になっているのです。それだけに、もし、このような生徒が奨学金を受けることができれば、政府によってサポートされていないことによるこれら追加支払い必要費用への家族の負担を軽減することができるのです。
 

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