ヌッシャリン・サスィピブーン助教授
洪水被災者となった奨学金支援者、
ヌッシャリン・サスィピブーン助教授
(チャンクラセーム・ラジャパット大学 管理部元副総長)
ヌッシャリン・サスィピブーン助教授
昨年2554年の大洪水のあとタイの銀行が発表した報告によると、この水害のための損害額は一兆バーツにもなるということでした。そして、被害は広くタイ全土に及び、タイ国の最近70年の歴史の中で、最も被害の大きかった「大水害」となりました。
 
私自身、他の多くの人と同様に被災者の一人になってしまいました。というのも、家がバーンケン区のラムイントラ―通りにあるので、1か月以上もの間、大通りも細い脇道も60~70センチメートルの水位で浸水していたからです。小さな車は通ることが出来ず、また水は腐ってひどい悪臭を放っていました。当初私は、どうしたらよいのか自分でも全くわかりませんでしたし、いつになったら水は引いていくのかと思っていました。
 
それでも、私は他の被災者の方たちと比べれば、まだ運が良い方でした。なぜなら、飲料水や生活水があり、乾燥食品や電気もありましたから。それに、たとえ、生活が不自由で何事にも以前のようにスムーズではなかったとしても、私には、座右の銘としている「We have to hurt before we can be strong」あるいは「痛みや苦痛は、我々をいつも強くする。」という言葉がありました。私は、この言葉を自分に言い聞かせて、いつも自分を励まして来ました。そして、この危機的状況の間、私は、親戚、友人、それに教え子たちを元気づけるために、この言葉を教えました。それはもう自信を持ってきっぱりと語ったものでした。さらに言えば、私が教え子たちに「ボランティア精神」や「他人と分け合うことの大切さ」を教える上では、この実体験は、彼らがそれらの言葉をより深く理解するのに、とても良い機会になりました。
 
私は、EDFからのニュースで、イサーン(東北)地方の貧困家庭の奨学生のうち、家族が今回の水害にあった子どもが大勢いることを知りました。子どもたちの両親の多くが、働いている場所が洪水になったために、収入が途絶えました。そればかりか、バンコクや近郊の工業団地に出稼ぎに来ているたくさんの人が、この水害で失業せざるを得なくなり、地元に残っている家族に仕送りをするお金が無くなりました。
 
私は、これらの子どもたちは「欠乏の連鎖」という不幸に直面していると思います。なぜなら、彼らは、いろいろな機会に恵まれず、平等な扱いもされず、自分への投資のための資金力もないからです。今日、彼らは両親が失業し、勉強を続けるための仕送りが届かなくなったことで、頑張る意欲もなくしつつあります。
 
子どもたちの支援者である私の状況を考えると、洪水で被害をこうむったことで、もしかしたら、以前のようには彼らを支援していくことはできないかもしれません。しかし、私はこういう彼らを今後も援助し続けるつもりです。支援することで彼らを元気づけることができると信じているからです。併せてEDFの支援者の皆さまで、今回の水害で被害にあわれた方にも、元気を差し上げたいと思います。私は、これまで皆様がなさった支援や犠牲的行為は、皆さまに強い精神力をもたらすという成果になって戻って来ていると信じています。
 
奨学金を受け取った児童・生徒にとって、今現在一番するべきことは、一生懸命勉強することです。そして自分のなすべきこと、つまり学習することと、家や家族のための仕事を責任もってすることのどちらも頑張ることでしょう。今努力して何かするということは、彼らに困難に打ち克つ力をつけ、将来希望する夢を叶えることができるからです。
 
もし「元気=頑張る力」がお互いに伝え合うことができるものなら、私は皆さまの心を強い気持ちと元気でいっぱいにしたいと思います。

(2011年12月にインタビュー)

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