洪水により被害に遭った学生の一例
洪水により被害に遭った学生の一例
失いたくない学校生活


2011年9月から11月に発生した、ここ30年間で最大規模の洪水はタイ国内30県以上に被害をもたらしました。職を失って収入の道がなくなった人や、家族と離れ、避難所での生活を余儀なくされた人、また、亡くなられた人や財産を失った人など、何百万もの人が今回の洪水によって甚大な被害を受けています。

今回は、「ピちゃん」の家族について皆さんにお伝えしたいと思います。ピちゃんの本名はピヤチャット・ノンタワン。クーデュア村学校6年生の12歳の女の子です。おじいさん、おばあさんと妹2人でウボンラチャターニー県チェラメー区クーデュア村に住んでいます。あまり報道されていませんが、タイ東北部クーデュア村も洪水の被害を受けています。そして、今回の洪水は、すでに厳しい生活を送っていた5人の生活をさらに苦しくしてしまうものでした。
 
ピちゃんの両親は何年も前に離婚をしました。それ以来、ピちゃんと妹たちをおじいさんとおばあさんに預けたまま一度も家に帰ってきていません。おじいさんとおばあさんの肩には、まだ就学年齢の3人の孫たちの面倒をみるという責任がのしかかってきたのです。自分たちの土地でなく、公衆の土地に建っている小さなタイ式の住宅は、干草やトタンの切れ端、なんとか見つけてきたような古いベニヤ板等でできています。ピちゃんの家にはテレビがありません。あるのはトランジスタラジオだけです。これで家族は外の世界のニュースを知るのです。
 
ピちゃんの家は、クーデュア浜と呼ばれるところにあります。ムン川が周りを取り囲むように流れていて、まるで中州のようになっているところに家が建っています。このクーデュア浜は、ウボンラチャターニー県の中でも有名な観光地の一つです。ピちゃんのおばあさんは地元の果物を観光客相手に毎日売り歩き、日に100~150バーツを売り上げることもありますが、その日の観光客の人数によって左右されますし、売り切れない日は赤字です。ピちゃんのおじいさんは、約60歳で日雇いの仕事をしています。また、高齢者生活補助金として、月に500バーツを受け取っています。学校が休みになる土日には、ピちゃんもアルバイトをしています。観光客相手のレストランでウェイトレスをし、1日の収入は約70~100バーツです。ピちゃんは、ここで得たお金をすべて生活費としておばあさんに渡しています。そして、おばあさんはピちゃんや一緒に学校に通う2人の妹たちに、お小遣いとして日に10~20バーツを渡すのです。
 
2011年9月1日から、ムン川の水がクーデュア浜にも流れ込むようになりました。そして、周辺の集落やピちゃんの通っているクーデュア村小学校も浸水しました。また、観光客がこなくなってしまい、レストランも浸水したので、ピちゃんやおばあさんの収入の道が絶たれてしまいました。ピちゃんの自宅も、一面の水の中にぽつんと浮かぶ島のようになり、どこへ行くにも非常に苦労をする状況です。
 
2011年11月中旬には、家の周囲の水位はやや下がってきたところがあるものの、クーデュア浜の周りは相変わらず水がついた状態です。そして、ピちゃんの一家は収入がなくなってもうすぐ3ヶ月になってしまいます。おばあさんは、少ない蓄えを切りくずし生活をしていましたが、それも洪水になってから数週間も経たないうちに底をついてしまいました。現在、この5人はたまに配給される政府からの援助物資で生活をしている状態です。
 
ピちゃんは「早く水が引いてほしいです。そうすればまた学校に行けるし、働きにも行けます。私や妹たちの食事を確保するために、水のなかを苦労して歩いていかなければならない祖父母のことが本当にかわいそうです。舟もないので、このように水がついた状態ではどこに行くにも大変です。蛇やムカデにかまれないように注意しなければなりません。」と私たちに話してくれました。
 
「私もいつ水が引くのかわかりませんし、水が引いたところで、すべてが元通りになるのかどうかもわかりません。前のように観光客が戻ってきて、レストランが再開されるまでは長い時間がかかるでしょう。孫のことが心配でなりません。お金がなくなったら、孫に何を食べさせればいいのでしょう、学校へはどうやって通わせればいいのでしょう。おじいさんの健康状態もよくないですし、家は公衆の土地に建っていて、自分たちの土地もないのです。」こう話すピちゃんのおばあさんの涙はとまりませんでした。
 
ピちゃんの通う学校の先生はこんなお話を聞かせてくれました。「ピちゃんは親孝行ですし、生徒の代表も務めるような生徒です。成績や振る舞いも非常に立派ですので信用も厚く、いろんな学校行事で生徒のリーダーを務めています。また、学校を訪問されるお客様を生徒代表としてお迎えし、挨拶をするのはいつもピちゃんです。」
 
このピヤチャット・ノンタワンさんは、2012年度EDFダルニー奨学金の中学生部門の奨学金を受け取ることを希望している生徒の一人です。EDFの現地調査では、ロイエット県、ガラシン県、ブリラム県、マハサラカーム県、ウボンラチャターニー県、コンケン県、シーサケット県、そしてスリン県等、今回の洪水の被害を受けた東北地方の県に何千人も奨学金を受け取りたい生徒がいることを確認しています。洪水の直接の被害だけではなく、たとえば首都バンコクやその周辺地域で働いていた両親が職を失ったりするなど、間接的な被害を受けている生徒たちもいます。彼らの保護者は、すでに貧しい状態であった上に、収入がなくなったり職を失ったりしていますので、生徒たちは学業を続けられないかもしれないという非常に危険な状態にあるのです。
 
今、彼らの未来を変えることができるのは皆さんです。皆さんの2,000バーツ或いは6,000バーツで始まるご支援が彼らの将来を大きく変えることになるのです。もうすぐ始まる2012年度の新学期、彼らがもう一度学校に通えるよう、EDF ダルニー奨学金を通じて援助をお願いします。
 
(2011年12月、ダルニーフォーラム5号より)

 


Connect with EDF
594/22 Patio Ratchayothin, Soi Phahonyothin 32, Sena Nikhom 1 Rd.,
Chan Kasem, Chatuchak, Bangkok 10900 THAILAND | +6625799209 to 11
EDFは1994年には財務省から255号の税制優遇措置団体に認可されました。EDFへの寄付の領収書は所得金額から控除され、この分は所得税が課税されません。 © 2011 EDF Thailand